INTERVIEW

株式会社セールスフォース・ジャパン 館野 武正 × タンバリン 中尾 達也・古川 賢太郎
お客さまから見ると、つながっていて当たり前。クロスクラウドで、すべてのサービスをつなぐ。

中尾 達也 / Tatsuya Nakao

株式会社タンバリン 取締役社長
クリエイティブテック・エージェンシーの株式会社TAMでテクニカルディレクターを務めた後、2015年9月に株式会社タンバリンを設立。お客様のビジネスに深く入り込み貢献する受託開発事業を展開。SalesforceやHerokuなどのクラウドプラットフォームを活用したWebサービスの開発を多数手掛けてきた。目指すのは「日本で一番、顧客接点の課題を解決できるエンジニア集団」。
Twitter @tamb_nakao

館野 武正 / Takemasa Tateno

株式会社セールスフォース・ドットコム
プリンシパル クロスクラウドアーキテクト
外資系大手IT企業3社を経てセールスフォース・ドットコムに入社。メインフレーム時代から現代のクラウドコンピューティングに至るまでの時代の中で、開発/SE/デリバリー/コンサル/エバンジェリスト/ビジネス開発/マーケティングディレクターを歴任。セールスフォース・ドットコム入社後は、各ビジネスユニットでのSE経験、アライアンス部門でのパートナーSEおよびビジネス開発経験、各業種へのソリューション提案経験を活かし、製品/企業規模/業種のすべてをカバーするGlobal初のクロスクラウドアーキテクトに着任し、商談支援/パートナーSI支援/ソリューション開発/SEおよびプライムパートナー育成を担当。
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古川 賢太郎 / Kentaro Furukawa

株式会社タンバリン 上席執行役員
塾講師、フリーペーパーの編集・DTP・デザイン、システム会社でのPM、経営企画・経営管理など、あらゆる業種・ポジションを経験。その後、Webサービス開発ベンチャーであるモンスター・ラボに転じ、営業統括、プロジェクトマネージャー、アカウントマネージャーなどを務める。 独立(合同会社ウィズ)後、株式会社イルカアップスでシニアマネージャとして経営管理を構築。その他、ガルチCFO、タンバリンの前身であるTAMコンサルタントなど歴任。現在はタンバリンにて管理部門および営業部門を統括。
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INTRODUCTION

1999年にカルフォルニアで創業し、CRMソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスで、20年以上にわたって世界のスタンダードをつくってきたSalesforce。2008年に日本のSalesforceに参画し、今は世界でも2人しかいない「Cross Cloud Architect」として、第一線で活躍をつづける館野武正さま。中尾とは10年来のお付き合いで、Herokuやeコマースなどさまざまな知見をご教示いただいてきました。タンバリン 古川を交え、「クロスクラウド」をテーマに、Salesforceの現在地とこれからについてお話をお伺いしました。

※ このページはnoteからの転載記事です。

INTERVIEW

全てのサービスをつなぎ、「業務体験」と「顧客体験」を向上させていく

中尾:
館野さんとお会いしたのは、タンバリンを創業するずっと前の2004年くらいでしょうか。当時は、WEBサービスとCRMを連携させる技術が今のように確立されていなくて、僕はトリッキーな方法も駆使しながら、あの手この手で試行錯誤していました。

その後Herokuが登場したあたりで、館野さんに相談させていただくようになり随分お世話になってきました。今回は現在「Cross Cloud Architect」として活躍されている館野さんに、お話を伺って勉強させていただきたいと思っています。

古川:
よろしくお願いします。

館野さま(以下、敬称略):
こちらこそ、よろしくお願いします。

中尾:
Salesforceさんは、驚くほどのスピードで次々に新しい製品やサービスを加えていかれていますよね。

館野:
はい。SalesforceはもともとB to Bの営業支援系サービスからはじまった企業で、顧客情報を一元化するCRMを初めてクラウドで世に送り出しました。その後ビジネスを拡大する中で、デジタルマーケティングやコンタクトセンター向けのアプリケーション、それらを支援するAIの機能も提供するようになりました。さらに、eコマースなどのB to Cの顧客接点を管理する製品やサービスにも領域を広げています。

古川:
私たちも日々勉強し、キャッチアップしようと取り組んでいます。

ありがとうございます。これから大切になってくるのはこれらの製品やサービス、全てをつなげることだと考えています。お客さまのビジネス、行動や業務などを組み合わせて、サービスが影響し合い呼応し合いながら生まれていく価値こそ、Salesforceが本当に提供するべき価値です。私たちはお客さまの業務がサービスの連携によって、よりよいものになっていくことを「業務体験」と呼んでいます。そして、お客さまのさらに先にいるユーザーの「顧客体験」と「業務体験」が相互補完しながら向上していく。全ての製品やサービスをひとつにつなぐことで、このような提案が可能になると考えています。

中尾:
「業務体験」。顧客体験と対をなす大切なキーワードですね。

館野:
Salesforceの数多くある製品を見ると、これはマーケティング、これは営業、これはコールセンターと、横並びに捉えてしまうことがあります。ですがこれまでもこれからも、私たちが届けていくのは、業務を一気通貫するソリューションです。どの業務に携わる方であっても、Salesforceの製品やサービスを使っていただくことでビジネスが加速し、「業務体験」を価値あるものに高められる。それがSalesforceを使っていただく意味だと捉えています。

古川:
Salesforceさんの製品やサービスは組み合わせてこそ、真の価値を発揮する。私たちもお客さまとの開発を通して日々実感しています。

館野:
私は、ITの世界に身を置いて30年ほどになります。その中でもはじめての経験なのですが、Salesforceは完全に自社で、数え切れないほどある製品を使い切っているんです。我々自身がしっかり価値を体験した上で、横つながりの業務体験をお届けしています。

マルチクラウドから、クロスクラウドへ。そもそもお客さまにとっては、つながっていて当たり前

中尾:
館野さんは今、「Cross Cloud Architect」として活躍されているとお伺いしています。そもそも「クロスクラウド」とはどのような意味なのでしょうか。

館野:
言葉の定義でいうと少し難しいかもしれませんが、セールスフォース・ジャパンとしてしっかりとした定義づけをしなくてはならないと、そもそも言い出したのが私でして。最近良く聞かれるマルチクラウドというのは、現時点におけるSalesforceの状況がまさにそうなのですが、いくつもの製品やサービスが集まりそれらが“併存”している状態。必要な機能やサービスをその時々のニーズに応じて、個別にお届けできるところまではやってきました。これに対して「クロスクラウド」は、ただ同じプラットフォーム上に並んでいるのではなくて、クラウド上であらゆる製品がお互いに呼応し合っている状態です。“つながる”ということが全体としてひとつの大きなソリューションを生み出していくと考えています。

中尾:
「マルチクラウド」と「クロスクラウド」は似て非なる考え方なのですね。

館野:
これを“定義”と言ったのは、実はお客さまに対してはクロスクラウドという言葉をあまり使いたくないという私の想いがあります。とっても大切な考え方ではあるけれど、ちょっと考えてみると恥ずかしい言葉になってしまう。

中尾:
恥ずかしい、ですか?

館野:
お客さまからすれば、つながっていて当たり前だと思うのです。Salesforceが提供するいろんな製品が一気通貫で業務をサポートしてくれるという状態を、いかに自然につくれるか。今がまさにその過渡期にあると考えています。Salesforceの社内や、タンバリンさんのようなパートナーに対しては、クロスクラウドという言葉を使うのですが、お客さまに対しては、ワンソリューションやトータルソリューションという言葉を用いて提案をしています。

世界初のCross Cloud Architect。ビジョンをともに描き、サービスもデータもつなげていく

中尾:
「Cross Cloud Architect」という肩書を持つ方は、館野さんを含めて世界でまだたった2人しかいないそうですね。

館野:
そもそも全世界の中から任命されたというよりも「Cross Cloud Architect」という役割を世界で初めて求められたのが日本だったのです。海外では、Salesforceのプラットフォームに合わせて自社のビジネスを変えるということが比較的スムーズに行われますが、日本では、企業独自の基盤や商習慣に合わせてサービスをカスタマイズしていくという風潮が根強くあります。

自ずと、システム全体の構造(アーキテクチャ)が複雑になるため、そこを専門的にサポートしていく役割が必要でした。

中尾:
どのようにお仕事を進めていかれるのですか?

館野:
Salesforceは非常に多岐にわたる製品やサービスを提供しているのですが、つなげて組み立てていくときに、お客さまの環境であったり、外部の周辺サービスであったり、タンバリンさんに開発していただくようなサービスとつながり合ってこそ価値を生みます。それらをつなげてトータルに構造を組み上げていくという仕事は、かなり難易度が高いものだと考えています。そして組織全体の基盤をつくり変えるような大きな話になるため、大きなビジョンを描かなくてはなりません。機能面だけを見て下から組み上げていくことは難しいのです。

ですからまず、わたしたちの仕事は、なぜさまざまな業務基盤やデータをひとつにつなぐのか、プロジェクトの先にある大きなビジョンを描き、お客さまと共に全体像をイメージするところからはじまります。

次に大切なことが、シナリオとユースケースを固めていくことです。クラウド製品群をシームレスにつなげて、どんなシナリオ、どんなユースケースが考えられるのかを検証していきます。お客さまから業務や事業の内容を聞いて目指すべき業務体験を描いていくのですが、そのなかで、全体で管理される情報やデータフローが重要になります。

そこまで落とし込めてはじめて、ソリューションアーキテクチャとしての形をなすことができます。このような一連の工程を常にリードしていくことが「Cross Cloud Architect」の仕事です。もちろん私ひとりで取り組むのではなくて、営業であったりSEであったりパートナーさんだったり。お客さまにもそのなかに入っていただきつくっていきます。

時代を切り開くテクノロジーに携わっていたい

中尾:
館野さんが「Cross Cloud Architect」に抜擢されたのはなぜなのでしょうか。

館野:
私は時代を切り開いてきたテクノロジーにとても感心が強くて、Salesforceに入る前からそれらに関わってきました。メインフレーム、汎用機、インターネットが始まってからのUNIX、データマイニング。前職ではありがたいことに「データアルゴリズムを学んでこい」と、スタンフォード大学へ送り出され勉強させていただく機会にも恵まれました。

中尾:
ずっと時代の最先端にいらしたんですね。

館野:
大学でデータの本質を学んだあとは、eコマースの時代が来まして。SaaSにつながるクラウドコンピューティングの技術に携わり、突然マーケティングのマネージャーを務めたこともありました。

本当にラッキーだったと思っています。新しいものを常に求めていたし、その時代を象徴するような技術に実務で携わってくることができました。そして今、ちょうどSalesforceが大きく舵を切ろうとしているこの時期に、これまでの経験の全てを注ぎ込みたいと考えています。

中尾:
誰でもできるような仕事ではありません。

館野:
とは言え、これからのSalesforceの行末を考えると、属人的になってはいけません。2021年の5月には新しくもうひとりの方が就任しました。

これはCross Cloud Architectに限った話ではありません。Salesforce全体のサービスをどんどん統合しつつ、役割は分解してスケールさせ、人員を大きくしていくところに差し掛かっていると感じています。

サービスも人員も、お互いに呼応し合い、ひとつの大きなソリューションへ

中尾:
Salesforceさんのように、製品やサービスを次々と傘下に加えている会社は他にもあります。しかし多くの企業では、他の製品やサービスとの連携があまり図られていなくて、お互いの機能が重複していることもよくあります。

その点、Salesforceさんでは、新しい製品やサービスをしっかりと自社のものにされているなと実感することが多々あります。そのまま製品を提供するのではなく、重複する機能はマージしたり、お互いの連携を図ったり、ちゃんと一つひとつのサービスを活かすことを前提に事業を広げている、という意思を感じています。

館野:
今はまだ過渡期にあり、クロスクラウドとしてつながりをさらに深めていけたらと考えています。クロスクラウドという言葉自体、それぞれのサービスが別個に存在していることを認めてしまうことになるので、いつかこの言葉が使わなくてもすむ日が来るといいなと思っています。

Salesforceのさまざまな製品やサービスは、ひとつにつながっているべきで、つながっていて当たり前。いくつものクラウド製品がお互いを呼応しつながることが、ソリューションを導くと考えています。

古川:
つながっていて当たり前。シンプルですが簡単にできることではありませんね。

館野:
製品を統合することは、企業と統合することでもあるので、Salesforceは多様な文化を持つ人たちが集まる複合体になりつつあります。人員という意味でも、これからますます統合させ、お互いを活かし合っていく必要がある。そこに向かって、タンバリンさんをはじめとするパートナーのみなさまとも密に連携していくことが重要だと考えています。

部分ではなく全体を一緒に見渡し、同じゴールを目指せるパートナー

中尾:
「Cross Cloud Architect」としてお客さまとの関係で、大切にされていることをお伺いできますか。

館野:
これからはユースケースやシナリオで、何ができるようになるのか明確に型化したアプローチが必要だと考えています。

とりあえずたくさん製品があるから全部売ろうじゃなくて、業務体験や顧客体験として何ができるのか、型をわかりやすく形成できれば属人化の心配もありません。

古川:
関わる人たちがより理解しやすくなるわけですね。

館野:
型にできたら、それらを分解しパートナーさまやエンジニアに渡して、サービスの中での具体的なインターフェースをしっかり考えていただきたいと思っています。そしてまたみなさんがつくったものを私が集約して、データをフロー化しアーキテクト全体の構造を組み上げていきます。

中尾:
お客さまだけではなく、パートナーともさらに密に連携していくことが重要になりそうですね。

古川:
我々も含め、パートナーと密な連携をとる上で大切にされていることはありますか?

館野:
次々と導入される製品やサービスの情報を、パートナーのみなさまにもスピード感をもってお伝えするとともに、我々がそれらの製品やサービスを通して実現したい「業務体験」や「顧客体験」をしっかり伝えていくことが大切だと考えています。タンバリンさんもそうですが、個別にセッションを設けて、いち早く最新のロードマップやアライアンス技術をお伝えしています。古い表現になりますが、タンバリンさんは我々にとって、プライムなパートナーさまです。

中尾:
とてもありがたいです。私たちも、デザインやサービス、オペレーションや分析に、貪欲に取り組んできました。これらの経験を通して、部分的な開発ではなく、すべてに応えるフルサービスが一番お客さまにとっていいはずだということを肌感覚で学んできました。

館野:
たとえば、マーケティングクラウド、サービスクラウド、コマースクラウドのエンジニアがいたとして、3社つなげばクロス提案ができるかというとそうではないんですよね。やっぱり一つひとつの間に隙間があるんです。全体を俯瞰で見られる人は非常に大切で、そうした視点を持ってくださるパートナーとして、タンバリンさんは一番の信頼を置いています。

中尾:
ありがとうございます。なぜそのような信頼を寄せていただけているのでしょうか。

館野:
Salesforceの製品やサービス、ビジネスは、これまでに経験したことのないスピードで進んでいます。習得してもすぐ次のことが求められますが、タンバリンさんはマインドセットや戦略の部分で、そのスピードに追随いただいている。そこが一番の期待値であり、これまでも随分助けられてきました。

中尾:
技術で言えば「これはもしかしたら無くなるかも」と考えるよりも先に、触り続けないといけないですよね。見込みの立ちそうなものに絞るのではなく、無くなるかもしれないけど今ベストな構築方法はなにか。目の前の新しい技術を使えばいいというわけでもありません。タンバリンの社内でも、こうしたマインドセットを持っていてほしいと伝え続けています。

館野:
次々と新しい技術をキャッチアップしてプロジェクトの全体像を一緒に見渡してもらえることができるので、タンバリンさんはプリセールスからご一緒できる本当に心強いパートナーだと思っています。

中尾:
館野さんに我々のこれまでの取り組みが伝わっていて、感動しました!うれしいです。

古川:
本当に今日はありがとうございました。

館野:
こちらこそ、ありがとうございました。