INTERVIEW

ロート製薬株式会社 笹野 正広・石村 広美 × タンバリン 中尾 達也
「ロートとつながっていてよかった」。お客さまと心地いい関わりを続けていく。

中尾 達也 / Tatsuya Nakao

株式会社タンバリン 取締役社長
2015年9月に株式会社タンバリンを設立。お客様のビジネスに深く入り込み貢献する受託開発事業を展開。SalesforceやHerokuなどのクラウドプラットフォームを活用したWebサービスの開発を多数手掛けてきた。
Twitter @tamb_nakao

笹野 正広

ロート製薬株式会社 D2C事業部長
1998年ロート製薬入社。 商品企画、広告などマーケティング業務に従事。経営企画、アグリファーム事業などで新規事業立ち上げ、運営にも携わる。2020年から現職。

石村 広美

ロート製薬株式会社 D2C事業部所属
2010年ロート製薬入社。 コールセンターでのお客様対応を経て、ECサイト運営、システム構築と通販事業の多岐な領域に従事。 ECサイトでのキャンペーン企画やメルマガを活用したWEBプロモーションなどが得意。

INTRODUCTION

創業120年を超える、ロート製薬株式会社(以下、ロート製薬)。「NEVER SAY NEVER」をコーポレートアイデンティティに掲げ、目薬に留まらず、スキンケアアイテムやサプリメントなど、次々と事業を拡大。デジタルでのコミュニケーションにも力を注ぎ、「D2Cプロジェクト」と銘打たれたECサイトの大規模なリニューアルにも取り組まれています。今回は、このプロジェクトを牽引されている笹野さま、石村さまにお話を伺いました。

※ このページはnoteからの転載記事です。

INTERVIEW

EC事業の存在意義と、価値を見直すところから

中尾:
ロート製薬さんは120年もの伝統をもつ老舗企業でありながら、次々と新しいチャレンジに取り組まれていますよね。

笹野さま(以下、敬称略):
私たちロート製薬はこれまでにも「美と健康」に関わるさまざまな分野でお客さまに商品を使って頂いています。最近では医薬品、化粧品だけでなく、医食同源と言いますが、食事業として「旬穀旬菜(しゅんこくしゅんさい)」という薬膳フレンチレストラン&デリカフェを大阪にも構え、「やえやまファーム」という石垣島のなかで完結する循環型農業にも取り組むなどもしています。

中尾:
レストランから畑まで。本当に幅広い事業展開ですね。

笹野:
今私たちは「Connect for Well-being」という経営ビジョンを掲げています。一人ひとりの「美と健康」と向き合い、自分らしく生き生きと過ごしてもらえるように、プロダクトの提供という枠に留まらず、お客さまとのつながりをこれまで以上に大切にしていきたいと考えています。

中尾:
ロートさんの事業にとって、ECサイトの改修をはじめとするデジタル上のコミュニケーションはどのような意味を持っているのでしょうか。

笹野:
ロート製薬はBtoBtoCのビジネスモデルが主体です。ドラッグストアなどの小売店舗で、商品を通してお客さまと関わってきました。その一方で1999年からEC事業を展開し、全国の店頭に流通しきれていない商品や、オンライン限定の商品をお届けしています。

中尾:
20年以上もEC事業を手掛けてこられたわけですね。

笹野:
この20年で私たちの生活は大きく変化しました。ネットで気軽に悩みや気になることを調べられたり、商品のレビューを見比べることができたり。改めて、ECの存在意義や価値、体験を見直す時期がきたのではないかと、2020年の秋から「D2Cプロジェクト」がはじまりました。

中尾:
D2C(DtoC)は「Direct to Consumer」、製造者が直接お客さまに製品やサービスを届けるという意味ですね。

石村さま(以下、敬称略):
そうです。さきほどのお話にもありましたが、これまでロート製薬は「BtoBtoC」をビジネスモデルの主軸として、小売店舗さんを通してお客さまと関わってきました。ですが、このプロジェクトはお客さまと「直接つながる」場をさらに広げていこう!という強い意思を持ったチャレンジです。

中尾:
その第一歩が、ECサイトのリニューアルというわけですね。

石村:
はい。よりお客さまとの関係性を深め、製品やブランドではなくもっとお客さま中心のコミュニケーションをはかっていくために、自社のECサイトを一新することになりました。

お客さまが、その時求めている体験に出会える場をつくりたい

中尾:
一緒に取り組ませていただいたサイトリニューアルでは、ショップの機能やデザインだけではなく、ECそのものの価値を再定義しながら進んでいきましたね。

笹野:
そうですね。私たちはこれまで、プロダクトベースでビジネスを広げてきました。ものをつくる企業として、商品に焦点をあててブランドマーケティングを深めてきたんです。ECサイトも同様に、ブランド起点でお客さまへのアプローチを試みてきました。

中尾:
ロートさんは強いブランドをたくさんお持ちですからね。今回のリニューアルでロートECサイト扱いのブランド数が20を超えると知り、改めてその可能性を感じさせられました。これだけのブランド数があれば、ひとりのお客さまに対してもライフステージやニーズの変化にあわせて、さまざまな体験をお届けできそうです。

笹野:
今回の「D2Cプロジェクト」では、ブランド起点からお客さま起点へのスイッチがひとつのポイントになりました。もっとお客さまを中心に据えて一人ひとりと向き合い、つながっていくことを大切にしたいと考えました。

中尾:
プロダクトアウトから、パーソナライズへと舵を切ったんですね。

笹野:
健康についての関心は一人ひとり異なりますから。お悩みも違えば、状況も違います。ただ製品をお届けするのではなく、その時の自分に合った体験に出会えるように、お客さまにとことん向き合うことからはじめました。

「つながっていてよかった!」心地よさのある関係を続けていく

中尾:
ブランド単体ではなく、会社全体としてお客さまとの関わり方を見直していくという事自体が、新しい試みだったのでしょうか。

笹野:
これまでも各ブランドの取り組みを一体化させようという考えはありました。その具現化に向けた一歩として、ECサイトのリニューアルが寄与してくれたらと考えています。オンライン上での包括的なコミュニケーションを通して、お客さまにどう役立っていけるのか。提供できる情報やサービスをさらに拡充させていきたいです。

中尾:
みなさんのプロジェクトに向き合う姿勢を拝見していると、ECサイトは売上を伸ばすためだけの手段ではなく、それを超えた存在なんだなと感じさせられます。

笹野:
私たちにとってECサイトはお客さまとつながる大切な窓口です。だからこそお客さまを無理に追いかけず、心地よさのある関係を大切にしていきたいですね。

中尾:
「心地よさ」というのは、とても重要な考え方だと思います。デジタルを介したコミュニケーションは、お客さまの個人情報を取り扱うこともあり、距離感の図り方がとても難しい領域ですよね。

笹野:
お客さまの視点に、どれだけ寄り添えるかが大切です。ECサイトに来ていただいた時に「ロートとつながっていてよかった!」。そう思っていただける体験を、最適なタイミングで届けていけたらと考えています。

「生の行動」が見えると、関わり方も変わっていく

中尾:
2021年7月に新しいECサイトがローンチされ、運用がはじまりました。ダイレクトにお客さまとつながることで、何か変化や手応えを感じる場面はありますか?

笹野:
これまでもお客さまの声を大切にしてきたので、コールセンターやメールなどで「生の声」に触れてきました。そこに加えて、今回のリニューアルではSalesforceのプラットフォームを活用してECを再構築したことで、お客さまの「生の行動」が見えるようになってきました。

中尾:
行動データが活用できるようになっていくと、さまざまな発見や施策につながっていきそうですね。

笹野:
マーケティングのあり方も、お客さまとの関わり方も、これから大きく変わっていきそうです。

中尾:
ロートさんがこれまでの研究や製品開発で培ってこられた知見も、お客さまにとって魅力的なコンテンツになりそうですね。

笹野:
研究成果はこれまでコーポレートサイトやブランドサイトでも発信してきていますが、ECサイトでよりお客さま視点のコンテンツに編集して情報提供していくのもおもしろそうです。 それから一方的な発信ではなく、お客さまが私たちに期待していることも知りたいですね。つながることの意味がそこにあると考えていますので。

安心して戻ってきてもらえる、ホームをつくる

中尾:
2019年のリニューアルでは、定期購入のところも大きく関わらせていただきました。リプレイスの課題も「定期購入のお客さまに満足していただきたい」という想いが中心にあったと感じています。どういった点を重視されていましたか?

石村:
定期購入のお客さまに「安心して戻ってきていただけるホーム」をつくりたいと考えていました。

中尾:
「シンプルにわかりやすく」とおっしゃっていたのが印象に残っています。

石村:
例えば、注釈が多くて読みづらいページがある場合、お客さまが見たい情報は何なのかを徹底的に考えました。そんな時「次にいつ届くのか」「前はいつ買ったのか」といった情報がひと目でわかれば、お客さまにより心地よく使い続けていただけるサイトになれるかもしれない。タンバリンさんとも、このような議論をかなりさせてもらいましたね。

中尾:
人気アニメキャラと「プロポ」のコラボ企画も印象的でした。

石村:
コラボ商品は注目度が高いこともあって、これまで販売してすぐにサーバーがダウンしてしまうことがありました。そのため、Salesforceさんやタンバリンのみなさんにも尽力いただいて、通信の遅延でお客さまをお待たせすることがないよう、入念に準備を行いました。

中尾:
リニューアル後の販売時、ツイッターで追いかけていたのですが「ロートさんは落ちてない!サーバー増強してくれてありがとう!」なんてツイートを見かけた時は嬉しかったですね。

石村:
おかげさまでトラフィックが急激に増加するような施策でも、しっかり準備すればお客さまの心地いい体験を守ることができると実感できました。

中尾:
今回のリニューアルでSalesforceを生かした基盤ができました。これらを活かしてどんな取り組みを進めていきたいと考えられていますか?

笹野:
情報の提供はもちろん、コミュニティなどにもつなげていけたらいいですよね。プロダクトの販売にとどまらない、体験を提供していくプラットフォームに進化させていきたいと思っています。

石村:
まだスタート地点という感じですが、私たちもこれからが楽しみです。

中尾:
これからの変化も、間近で拝見していけたらなと思っています。今日は貴重なお話をありがとうございました!