INTERVIEW

GDO 志賀 智之 × タンバリン 中尾 達也
ゴルフ場予約からスコア管理、そしてキャンプまで。ゴルフの“あたらしい”を創造し続ける

中尾 達也 / Tatsuya Nakao

株式会社タンバリン 取締役社長
2015年9月に株式会社タンバリンを設立。お客様のビジネスに深く入り込み貢献する受託開発事業を展開。SalesforceやHerokuなどのクラウドプラットフォームを活用したWebサービスの開発を多数手掛けてきた。
Twitter @tamb_nakao

志賀 智之/Tomoyuki Shiga

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 執行役員 CMO/CIO
UNIX系開発会社を経て、株式会社ソフマップでECサービスのリニューアルや新サービスの立ち上げを担当し、子会社取締役に就任。さらにクライアントサービスの経験を積むべくネットイヤーグループへ入社した後、2008年に株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン入社。 IT戦略室長、情報活用推進部部長を歴任し、お客さま体験デザイン本部(現UXD本部)を設立、2018年より執行役員としてCMOとCIOを兼任。データを活用したブランディングからCRMまでフルファネルでのマーケティングと、全社的なIT統制やシステムのモダナイズを推進している。 最近はライフワークとして、ゴルフのリブランディングに挑戦中。

INTRODUCTION

ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)は、日本最大級のゴルフポータルサイト。2000年にスタートし、2021年時点で会員数は490万人を超え、月間PV1.5億を誇るオンラインサービスです。開設当初から業界に先駆けたデジタル戦略によって、常に新しいゴルフ体験を提供してきたGDO。今回は、執行役員CMO/CIOの志賀智之さまをお招きし、タンバリン中尾がお話を伺いました。

※ このページはnoteからの転載記事です。

INTERVIEW

早くから「トライシクル」を実現させていた、ゴルファーのためのオンラインサービス

▲日本最大級のゴルフポータルサイト 「GDO

中尾:
GDOさんは僕がこの業界に入った2000年代前半には、既にオンライン上でサービスを確立されていて、常に先進的な取り組みをされているイメージがありました。

志賀さま(以下、敬称略):
もともとはゴルフ場の予約から始まったのですが、早いタイミングで「トライシクル」というモデルに取り組んで、ゴルフ場の予約、ゴルフメディア、ゴルフ用品のECという3つの事業を並行して立ち上げました。創設期の頃は、まだECとWEBメディアが両立しているオンラインサービスは見受けられませんでした。

中尾:
今でこそコンテンツマーケティングという言葉がありますが、この時代からメディアとしての存在を確立されていたんですね。

志賀:
GDOにはメディア専任の編集部が事業部としてしっかりあったんですよ。ゴルフの大会や選手の情報など、競技としてのゴルフを取材して“報道”として発信していたんです。

中尾:
最近よく見られるオウンドメディアとは、そもそもの成り立ちが違いますね。

志賀:
もうひとつ、ECからではなく、予約サイトからスタートしたのも好材料のひとつだったかもしれません。プレーをするのには予約が必要だから予約サイトをつくる、競技を楽しむための情報を届ける、そして道具を販売する。この3つの「トライシクル」は、ゴルフ好きたちが集まってとにかくゴルファーを喜ばせたいという気持ちでサービスを考えていたら自然とこういう形になった、という感じです。

中尾:
サービスの元になっている動機がとても純粋ですね。

スコア管理や、弾道計測まで。広がり続けるユーザー接点

中尾:
GDOさんのサイトにはおもしろいサービスやタッチポイントがたくさんあるなと感じます。いま、志賀さんが可能性を感じられている顧客接点はありますか?

志賀:
今でいうとスコアを記録できるアプリケーションでしょうか。ラウンド中にはスマホで、ラウンド後なら自宅のPCから、いつでもどこでもスコア入力をすることができます。これまで、著名なプロゴルファーにご利用いただいていた実績もあるんですよ。ゴルフはスコアが要のスポーツ。スコアはとても貴重な情報なので、“オンコース”でも顧客接点をつくれるサービスに今後の可能性を感じています。

中尾:
おもしろいタッチポイントですね。 サービスとして、アプリとECの連動などもあるのでしょうか?

志賀:
プレー中のデータを活かしたコミュニケーションをもっと発展させていきたいと考えています。スコアの情報を元に、今日の後半戦はパットがあまり良くなかったからパターをおすすめするとか。後日サイトを訪れたときのレコメンドでもいいですよね。ひとりひとりのスコア情報も同じIDで連携しているので、前回のプレー内容がわかるようになっています。

中尾:
データが豊かになれば、ユーザーのゴルフ体験がもっと豊かになるような提案をどんどん打ち出していけますよね。

▲ゴルフのスコア登録、分析が出来るアプリ「GDOスコア」

志賀:
それから最近、練習場にも目を向け始めています。

中尾:
練習場ですか?

志賀:
実はもともと、海外で軍事用に開発されたテクノロジーを応用して、自分が打ったボールの弾道を記録し分析できるサービスを展開しています。これからゴルフをはじめようとしている人、プレーからは遠ざかっていても練習場には通っている人、気軽に打ちっぱなしに訪れている人。練習場に集まるこうした人たちのゴルフ体験をもっと豊かにできる可能性が、まだここには眠っています。

中尾:
ユーザーさんの裾野がさらに広がりそうですね。

▲練習場で展開している弾道計測システム「トップトレーサーレンジ」

顧客データは顧客に活かされるためにある。「ONE ID」の包括的コミュニケーション

中尾:
3つの事業からはじまって、コース上や練習場にまでサービスが広がっていますね。

志賀:
練習した場所、練習の内容、プレーしたスコア、予約したコース、買ったもの、これらすべてをONE IDで連携しています。それぞれの情報がつながることで、よりくっきりとユーザーの解像度が上がり理解も進みます。

中尾:
ひとりひとりのお客さまとの関係が深まることで、ユーザーへ届けられるゴルフ体験の価値が深まっていきそうです。

志賀:
GDOはオンラインからはじまったサービスです。なので、テクノロジーを取り入れてあたらしいゴルフ体験をどんどん届けていこうというマインドがあります。ゴルフ好きがゴルファーのことを想ってつくって増えていったサービスがあちこちにあるんです。それらをひとつにつなげることで、いろんな角度からお客様を知ることができます。ECの購買行動だけでは見えない姿が浮かび上がってくるんですよね。

中尾:
いろんな角度からお客さまを知ることができるので、お客様の姿がより立体的に感じられますね。こうしたお客さまの姿を知っていくということは、情報を預かるということになりますよね。プライバシー方針などはどのようにお考えですか?

志賀:
こういう風にデータを活用させてもらいます、という透明性のある開示をして、お客さまからちゃんと許諾をいただけるのであれば、パーソナルな情報はむしろお客さまにとってもプラスになるものだと思います。要は使い方の問題ですよね。

中尾:
データに基づいた顧客理解が、お客さまによりよい体験として還元されるわけですもんね。

志賀:
情報が勝手に取られていて、勝手に使われていることが気持ち悪いのであって、公平性と透明性があればそんなに難しい問題ではないのかなと。お客さまご自身に選択権がきちんとある状態をまずつくることが大切だと考えています。

インターネットに、優秀な店員をつくろう

中尾:
いま、志賀さんが注目されている、テクノロジーはどんなものがあるのでしょうか?

志賀:
一時期はコミュニケーションをパーソナライズ化させるマーケティングオートメーションに注目していました。チラシをばらまくように同じ情報を提供するのではなく、パーソナライズされた一対一のコミュニケーションをつくっていきたいと考えていたんです。どれだけ人間っぽい提案ができるか、インターネットに優秀な店員をつくろうと言い続けてきました。そういう意味で、これからのAIも期待しています。

中尾:
体験を向上させるためのパーソナライズですね。

志賀:
そうですね、やっぱり一方的な押し付けや気持ちの悪いコミュニケーションになってしまっては良くないと思っていて、優秀な店員とお客さまの関わりのように、予約や練習場、プレー後に至るまで、360度のサービスによって、ひとりひとりに寄り添うようなゴルフ体験を生み出していきたいです。

ゴルフ場でキャンプ?ライフステージにも、あらゆる接点を

中尾:
ゴルフ離れされている方への接点についてはどう考えられていますか?

志賀:
お客さまを中心にした360度のサービスとは別に、ライフステージに合わせた長期的な時間軸を見据えた取り組みが必要だと考えています。これはゴルフあるあるなんですが、20代でゴルフをはじめられて、結婚して子どもができる30代前半くらいに一度離れる方が多いんです。しばらくして、お子さんが中学生くらいになるとまた帰ってこられる。そんな方に、戻ってきやすい環境を整えたいなと考えています。

中尾:
戻ってきやすい環境とは、例えばどんなものでしょうか?

志賀:
最近、Facebookにゴルフ場でキャンプしている様子を上げてるんですよ。

中尾:
ゴルフ場でキャンプですか?

▲志賀さんのSNSにもゴルフ場でキャンプを楽しむ投稿が。

志賀:
実は、子育て世代のみなさんは必ずっていいくらいキャンプとかアウトドアに積極的なんですよね。そこに注目して、ゴルフ場の余っているスペースでキャンプする提案なんかを進めています。

中尾:
確かに、ゴルフ場の環境ってばっちり整っていますもんね。

志賀:
そうなんですよ、プレーしない方にももっとゴルフ場に親しんでほしいんです。アメリカとかだと車で5分くらいのところにゴルフ場があるから、プレー後に家族でごはんを食べたりするファミレスのような場所にもなっています。ゴルフをしない小さい子たちも、ゴルフ場に来ることが普通だったりするんです。そういう体験も、将来的に広げていきたいと考えています。

中尾:
これもまさに、ゴルフそのものの裾野を広げる活動ですね。

2000年の創成期から現在まで、GDOさんがどのようにオンラインを通して顧客接点と顧客体験を広げてきたのかをお伺いすることができました。「【後編】設計はあくまでも仮説。大切なのは素早く、数多く打席に立つこと」でも、志賀さまとの対談を公開中です。GDOとタンバリンの関わりや、志賀さまからみた「タンバリンらしさ」についてお話をいただいています。